「そのパソコン、閉じませんか?」
とあるお仕事の打ち合わせ。
いつもの喫茶店でアイスコーヒーとタバコを吸いながらリラックスした状態でスタート。
お話をしながら僕はノートを開いて
お相手はパソコンを開く
「こんな風にしたい」
「こんな風に考えてる」
「方向性はこう」
そんな話をしているとカタカタと響くタイピングの音。
少しするとモニターを向けられてそこには
AIが出してくれた色々な情報やアイデアが並ぶ。
軽く目を通して気になる言葉を口に出す。
するとまた響くタイピングの音。
少しして向けられるモニター。
数回繰り返したときに僕の思考は自然と停止した。
窓の外に目を向けて、行き交う人を眺め
店内にいる他のお客様やマスターと娘さんの会話を聞く。
最初は気にせずカタカタと響く音とモニターを僕に向ける動作を繰り返していたお相手から
「どうかされましたか?」
と言われた。
正直な言葉を口にするべきか、少し悩んで僕の口から出たのは
「何かが違います。」
だった。
具体的に何が違うのか。
返ってくる言葉は大体想像がついていたものだった。
AIが出してくれたいくつかの案をまた見せられて、
「これならすぐに始められる」
「方向性はこれでいいんじゃないか」
そんなことを言われながら僕は
「うーん」
という言葉だけを繰り返していた。
「何かあるなら言ってくださいね。打ち合わせは対話が大切なんで」
そう言われたとき僕は咄嗟に言葉を返した
「そのパソコン閉じませんか?」
対話が大切なことはもちろん分かる。
でもさっきからやっていることはAIが出したものを二人で眺めるだけでそこには対話がなかった。
「面白い」
僕が大切にしているものや
笑いながら対話することが全くない、AIが出すものを待つだけの時間。
何の温度もなく感情もない文字列を眺めるだけで
僕の気持ちは少しも動いていなかった。
これをするならあなたはここにいなくていい。
僕がAIに壁打ちすればいいだけ。
やりたいことはそれじゃなくてそれこそ「対話」をして「面白い」というワクワク感や温度がある打合せだった。
「AIはあくまで参考程度です。案を出しているだけです。」
そう言われても僕が返す言葉は
「パソコンを閉じましょう」
それだけだった。
何度か繰り返したあと観念してパソコンを閉じたお相手。
その時僕が感じていたことを正直に伝えた。
僕がやっている人が人の話を聞くということの大切さを身に沁みて感じたこと。
教科書に書いてあるような返答だけをもらっても何も感じないこと。
対話がしたかったこと。
そして「これ、ネタにしますね。」ということ。
パソコンを閉じ、無言の時間が流れている間、もうそこには勝手に動くAIはいない。
対話をして、笑いが起きて、笑顔が生まれて
今日初めての「それ、いいですね!!」が生まれた。
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